ドラッグストアとゆかいな仲間たち

ドラッグストアのある生活は、きっと楽しい

昨年末書こうと思っていたこと

私はドラッグストアで働いている。

昨年は新型コロナウイルスが猛威を振るい

多くの人が不安や混乱に陥った。

不安を煽る報道やデマが拡散されて

当時、感染症対策に使えそうな商品はすべて買占められた。

マスクやハンドソープ、トイレットペーパーなど

一部商品は安定的な供給が出来ない状況になった。

 

そんな中で起きた出来事を綴ろうと思う。

 

2020年春

当時はデマ拡散によりトイレットペーパー品薄がドラッグストア各地で相次いだ。

入荷は未定、入荷しても秒で売り切れる。

一定時刻になるとペーパーが入荷するのではとお客さんが勝手に期待して

道に集まり、通路や近隣の駐車場をふさぐこともあった。

レジはフル回転、トイレにもまともに行けず

止まらない問い合わせと鳴りやまない電話をさばく毎日だった。

 

 

そんな日が続いたある日の正午

ひとりのおばあさんが来た。

70代ほどのご年配の方だ。

「トイレットペーパーはありますか?」ときかれた。

一日に何十回も商品をきかれたお決まりの言葉だった。

いつものように品切れであることと入荷未定の旨を伝えた。

 

それを聞いたおばあさんはその場でへたり込んで

突然泣き出した。

おばあさんの気持ちが不安定でぐらぐらしてるのがすぐに分かった。

ただ事ではない。

即、店長に報告し、店長に連れられおばあさんは事務所へ。

あとは店長に託し

私はひたすらレジと問い合わせをさばいていた。

 

本当は寄り添ってあげたかったし

おばあさんの話を聞いてあげたかった。

しかし、当時は異常な混雑度で

お客さんが売り場で泣いているのにかまってあげられないくらい

売り場は大混雑していてくそほど忙しかった。

 

おばあさんのためにも

事情をきいてるであろう店長のためにも

私は店をまわすことに全力を尽くした。

 

 

 

 

 

気が付いたら夕方だった

おばあさんはもう帰ったらしく店にはいなかった。

人の波がようやく切れ

一息ついたときに店長は私に話をしてくれた。

 

おばあさんはおじいさんと二人暮らしで

寝たきりのおじいさんの介護をしていた。

普段の生活や介護でトイレットペーパーがなくなり

どうしても買う必要があった。

家の近くの店や駅前の店は行ける限りすべてまわったが売り切れ。

 

ならば駅から少し離れた店なら

もしかしたらまだあるかもしれないとうちの店まではるばる歩いてきたらしい。

(うちの店までは坂が多く結構キツイ。聞いた時驚いた)

頼れる人も居ないからと頑張ってきたけど

ここでも売り切れと言われた。

足腰はつらい

精神的にもつらい

どこ行ってもトイレットペーパーは買えない

家ではおじいさんが待っている

どうしたらいいかわからなくなって泣いてしまったと。

 

 

このまま家に帰すのはあまりにも酷だと思った

店長はめちゃめちゃ考えたらしい。

めちゃめちゃ考えた結果

店長の自己判断で

おばあさんには

従業員用トイレの備品のトイレットペーパーを

1ロールだけ渡した。

 

おばあさんからは泣きながらお礼を言われたと店長は話した。

店長は「これが正しいことかわからないし許されることでもないかもしれない」

と悩み続けていた。

私は店長のしたことは正しかったと思うし

私も同じことをしたと思いますと伝えた。

 

でもこういうのはこれっきりにしましょう

また同じようなことが起こったらその時考えましょうと

店長と約束した。

 

 

 

 

 

この時期はいろんな経験をしたが

おばあさんの件は特に印象が強い。

お叱りを受けるつらさとはまた別のつらさを感じた。

この一件がとても深く刻み込まれているようで

未だに鮮明に思い出す。

あれから時間も経って

品薄も解消されたので書き起こしておこうと思った。

 

こういうことはこの一回だけだったので本当に良かったが

もう経験したくないなと思った。

 

これを読んだ方へ

ここまで読んでくださりありがとうございます。

ドラッグストアではマスクやうがい薬で度々品薄になりました。

また何かの商品が品薄になりそうなとき

このことを思い出して一度考えてほしいなと思います。

 

あれからおばあさんに会えてないが

元気に過ごしていれば良いなと思う。